吹稲のブログ

日々の生活を少し豊かにするために

デジタルゴールド -ビットコイン、その知られざる物語- の読書感想

デジタルゴールド -ビットコイン、その知られざる物語- の読書感想

ビットコイン黎明期に活躍した者の人間ドラマ その思想背景や信念・ロマンから、投資家たちとの関わり、そして現在に至るまで~

 

こんにちは、吹稲です。

 

今回読んだ本はコレ 

 

 ナサニエル・ポッパーさんの著作で、土方奈美さんの訳です。

 

 ビットコインの誕生から数年間の激動の歴史が、多くの登場人物とともに表情豊かにつづられています。

 

 物語は2009年から始まります。オンライン上のコミュニティに"サトシ・ナカモト"がビットコインのアイデアを書き込みます。
 これを見た"ハル・フィニー"が、実際にプログラムを作ってみたらと提案したことでビットコインが産声をあげます。
 

 時代背景としては、2008年9月のリーマンショックで記憶される、米国発の金融危機が世界を襲ってすぐの不安定な時期で、政府主導の大手金融機関救済や、中央銀行の資産購入によるドルのバラマキに反対する自由主義者たちの声が高まりつつありました。

 

 "サトシ"のプログラムはブロックチェーンと呼ばれる技術を用いた分散型台帳を使い、中央集権的な管理者が存在せず、匿名で自由に送金可能で、発行数は2100万コインを上限とするなど画期的なものでした。
 
 ビットコイン誕生当時はイデオロギープログラマーたちをビットコイン開発に駆り立てます。そのイデオロギーとは、匿名性による中央政府からの解放、旧態依然とした金融機関が徴収する送金手数料撤廃、中央銀行によるドルのバラマキによる通貨価値棄損の回避など、自由主義者たちの主張とマッチするものでした。

 

 しかし、ビットコインが徐々にプログラマーたちの間で認知されてくると、ビットコインの匿名性を利用したドラッグ販売を行うサイトや、ビットコインを手にしたい人に向けた取引所を運営するサイトなどが現れてきます。

 

 こうしてシリコンバレーの投資家や既存の金融機関も巻き込み産業として発展していったビットコインですが、取引所による顧客の集中管理や、当局との協調など、当初のイデオロギーとは異なる方向へ進んでいきます。

 

 もちろん、本書の中ではアルゼンチン(過去にデフォルト経験のある国家)の例に触れ、自国通貨のハイパーインフレや政府の為替管理強化に苦しむ国民に対して、価値の保存や自由な決済を提供する状況も描かれています。


 日本人の私としては、2013年のマウントゴックス事件が印象に残っていて、当時世界最大のビットコイン取引所であったマウントゴックスにハッカーが侵入し、大量のビットコインが消失した事件で、フランス人の"マルク・カルプレス"が日本語で会見をしていたのを思い出します。
 本書では、世界最大の取引所がなぜ東京・渋谷に存在し、フランス人が経営することになっていたのかの経緯も綴られています。


 この本は、ビットコインが誕生する背景となる思想や、ブロックチェーン技術の優位性を交えながら、激動の時代を駆け抜けた人々の物語ですので、プログラムの知識がないわたしでも、激動の世界に飲み込まれることができました!

 

 現在は1枚が500万円を超える状況で、ネットでも投資(投機?)の対象として見られがちなビットコインですが、本書を読んだ後はその見方も少し変わり、ビットコイン(またはブロックチェーン等の新しいテクノロジー)が切り開く未来を想像すると、現在の仮想通貨市場はバブルではなく、まだまだ発展途上なのではと思わされました。


それでは、ごきげんよう